2016年8月、渡川簡易郵便局の脇に、一つの商店が誕生しました。名前は「こんにちや」。4年前に宮崎市から故郷にUターンし、渡川簡易郵便局の局長として仕事をしてきた園田達也さんが新たに開いたお店です。限界集落と呼ばれる渡川にあって、どうしてお店を開いたのか。将来はどんな絵を描いているのか。お店にまつわるさまざまな話を、園田さんに聞きました。

—早速ですが、お店を開いた理由を教えてください。

園田さん: それまで渡川でずっと営んでおられた商店が、2015年12月で閉店するという話を聞きました。こういうお店は、単にものを売っているというだけではなく、お店に集まった人同士が話をする大切なコミュニケーションの場になっていたんですよね。昔は5〜6軒はあったのですが、遂に渡川からなくなってしまう。それを何とかしたいと思ったのがきっかけです。

—商売のご経験はあったんですか?

園田さん: いいえ。もともとぼくは宮崎市で設計関連の仕事をしていました。畑違いの郵便局に勤めるようになったのも、郵便局の後任を探していると聞いてのことです。畑違い続きですね(笑)

—そうなんですね。お店はどのようにして建てられたのですか?

園田さん: 青島ビーチパーク(※宮崎市にある有名な観光地・青島で2015年からスタートした、コンテナ仕様の海の家を含む期間限定の施設。人気を博し、観光客の数も倍増した)を訪れた時に、コンテナはいいなと思っていました。ところが、それを手がけた日向市の海野建設さんに相談に行ったら、コンテナは運搬にとても費用がかかるとのこと。どうしようかなと考えていると、海野建設さんが木材のパレットで建てる方法を提案してくださって、これでいこうとなりました。お店は床も壁も天井も、全部がパレットでできていて、建てるのも簡単。屋根がかかるまでわずか3日でできました。実は今、暖房をつけていないんですけど、あったかいでしょ?

—本当ですね!てっきり暖房がついていると思っていました(※取材は1月中旬。お昼前にも関わらず外は冷え込んでいた)。木の香りも心地いいですね。
園田さん: 断熱材が入っているのでプレハブよりも随分暖かいんです。海野建設さんはこれを災害時の仮設住宅などに使いたいと思っていたそうなんですけど、まだ実用化の例はなかったみたいで、ここが第一号なんですよ。

—それはすごい!
園田さん: 業界でも面白い事例らしくて、県外の大学から視察の問い合わせもありました。

—なかなか興味深い建築物なんですね。開店した時は感慨もひとしおだったのでは?

園田さん: ですね。オープン当日、お金を払う時に泣いてくださった方もいて、初日にして満足してしまいました(笑)。身近なところで買い物ができることをうれしく感じてくれたのかなって思います。お店の入口にデッキがあるんですけど、おじいちゃんやおばあちゃんたちがそこの前で靴を脱いで上がってこられたのは想定外でした(笑)。慌てて「靴履いちょっていいとよ!」って言いましたよ。

—お茶目ですね(笑)。商品はどんなラインナップですか?

園田さん: 洗剤などの日用品や菓子類、お酒、あとは渡川のオリジナル商品などを少し並べています。決して広くないので、できるだけ余計なものは置かないように考えています。そういえば、夏場はアイスがよく売れましたよ。

—アイスが買えるのは貴重ですね。

園田さん: そうです。それに、一つ気づいたことがありました。渡川の人は日向市に買い物に出かけることが多くて、子どもたちは親と一緒に車で出かけるんですけど、そうするとアイスを買う際は親がお金を払うので、渡川の子どもたちは自分でお金を払う経験ができないんですよ。

—確かに。そうすると、初めてのお遣いが「こんにちや」でできるようになったわけですか!

園田さん: そうなんです。昨年の夏休み、毎日アイスを買いに来てくれる子がいて、「あ、そうか」と思いました。お母さんのお使いで、子どもがサラダ油を買いに来たこともあります。お店の役目っていろいろあるなと、来てくれるお客さんから気づかされる毎日です。

—近くにコンビニがあるような町の子どもなら意識もしないことが、渡川では本当に特別な経験になりますね。

園田さん: そうですね。そんな役割も含めて、このお店は渡川の新しい「公共の場」としてやっていけたらと考えています。いろんなことに対応ができるコンビニであり、渡川の特産品や観光などの情報を扱う道の駅でもあり、いろんな人が集まるカフェでもある。そんな場にしたいです。

—なるほど。クラウドファンディングに挑戦しているどがわマンマのカフェは、このお店に併設されると聞いています。

園田さん: はい。デッキを広げて、そこにカフェを設けようと思っています。渡川には居酒屋がないので、これまではみんなで一緒に飲むとなると、誰かの家にお邪魔していたんですよ。でもここならみんなが集まって飲めますし、女性陣がコーヒーとお菓子を楽しんだり、通りすがりの人が「お、誰かな?」と見かけてふらっと立ち寄ってくれたりもする気がします。今までは見えにくかった人のにぎわいが、外から見えるようになるのもいいことかなと。

—夢がどんどん広がりますね。

園田さん: 宮崎市内で働いていたころは、店舗や住宅の設計に携わっていました。でも、ハード(建物)が完成したら終わりという状況に対して、その後のソフト(サービスなど)のことも考えないといけないんじゃないかと思っていたんです。その頃に思い描いていたのは、書店やお店が一緒になった設計事務所。パターンは違いますが、今こうして少しずつ現実になってきているように感じます。

—これからが楽しみですね。それでは最後になりますが、気になる店名の由来を教えていただけませんか?

園田さん: たまたま雑誌で見かけた東京のインド料理店が、「コチンニヴァース」という名前だったんです。ところがぼくはそれを「コンニチヴァース」って読み間違えまして、「インド料理店なのに日本語のコンニチワみたいな響きで面白いな」と感じました。そこで閃いたのが今の名前です。

—まさかのインド料理店由来とは驚きです。しかも間違って読んでいたとは(笑)

園田さん: はい。でも語呂もよくて気に入っています。皆さんのご来店をお待ちしています。