数十年に一度の仕事を担うというダイナミクス。 山の仕事に魅せられた20代の兄弟山師。

山師の平均年齢は、年々高くなっているそうだ。若者はいなくなり、60代を超えればベテランも体力の限界を感じてくる。そんな中で、渡川で最年少の山師兄弟を見つけた。

兄の小竹翔豪さん(27)、弟の慎吾さん(26)だ。小竹林業の跡継ぎとして日々山に入り、木を切り出し、手入れを行っている。「山師に若手が増えてほしい」と語る2人に、山師の面白さと思いをうかがった。

いつまでもここにみんなの笑顔を。 山に立つ二人、思いは一つ。

「伐採すると、山にハゲができます。何もなくなってしまうんです。そこに植林して新しい山を作る。その過程が魅力だと感じています」と、山師の仕事の魅力を語る慎吾さん。

山なんていうものを自分たちの手をかけて育てていくという感覚は、きっと山師にしか得られないものだろう。

山を育てていく仕事は、当然ながら一回で終わりではない。世代を越え、脈々と受け継がれながら、小竹兄弟もここに立っているのである。

一般に、木は伐採する大きさに育つまで少なくとも35年以上の年月を要するといわれている。山師が現役でいられる時間を考えれば、今日植えた木を切るのはもう次の世代の仕事である。先述の山師の感覚とは、そんなスケール感だと置き換えてもいい。

小竹林業の後継ぎとして、50代以上の先輩と働く小竹兄弟

2人の朝は早い。早朝には準備を終えて、「現場」と呼ばれる伐採場所に車を走らせる。重機に乗り、木を切り、形を整える。

その場で製材をすることが好きだというのが翔豪さんだ。「製材は、切る人の技術が最もよくわかる場面のひとつです。真っ直ぐな木を真っ直ぐに切れるか、曲がった木をまっすぐ切れるか。技術力は値段にも現れます。そのあたりが面白いところですね」。

「製材は切る人の技術力が試される。それが面白いんですよ」と翔豪さん

仕事を終えた2人が向かった先は、自宅の裏山。

ここではもうひとつの仕事が待っていた。聞けば、「この山を登ったところに、天神さんの神社を移したんです。もともと別の場所にあったのを移して、お参りしやすいようにと参道を整えたりしています」とのこと。

この取り組みは、地区の方々が協力して始めたもので、天神様を中心に、桜の公園を作るという計画なのだそうだ。

移築した天神様の社。やがては桜が咲き乱れる憩いの場となる

天神様のお社は行きづらい場所にあったことに加え、老朽化していたところを、もっと広い場所でお祀りしたいという気持ちから移築。移築した山を桜でいっぱいにしようという思いで取り組んでいる。

「昨年くらいから始めた取り組みで、山を手入れしたり、桜を植えたりと、地区のみんなで協力しながらやっています。みんなで作り上げた公園にできればいいなあ」と笑う2人。およそ15年後、ここにきれいな桜がいっぱいに咲き誇り、みんなでお花見をする景色がきっと2人には思い描かれているに違いない。

植林したての桜の苗木。いつかこの下でみんなが笑い合う日を夢見て。

仕事でも、仕事を終えてからも、山へと足を運び続ける2人。担い手不足が叫ばれる中にあって、どうして2人は山師の道を志したのだろうか。

兄の翔豪さんは「県外の大学に進学し、福祉関係の勤務先から内定ももらっていたのですが、一生やる仕事なのかどうかと悩んでいました。そんな時、ふと地元のことを思い返して、地元で仕事をしたいという気持ちに気づいたんです」という。

弟の慎吾さんはもっとストレートだ。

「高校を卒業してすぐに山に入る道を選びました。林業をやりたい、家業の小竹林業をなくしたくない、という思いでしたね」。

故郷を思う気持ちは誰しも持ちうるものだが、それにしても渡川という地域は本当に故郷愛にあふれた人が多い。小竹兄弟のように地域のバトンをつなごうとUターンする人材はもちろん、故郷に戻らなくとも故郷のためにと祭りやイベントで奔走したり、県内外で渡川を熱烈にPRしたり。渡川にはまだまだ掘り下げてしかるべき、人を惹きつけてやまない何かがある。

小竹兄弟といっしょに仕事をしている小竹林業の先輩従業員は、50代と60代である。「ぼくらが子どもの頃からいた方と一緒に仕事をしているのが変な感じですね」と笑う2人。若手の担い手として、渡川が抱える後継者課題を誰よりも強く感じているという。

「いますぐにでも若手を育てないと、技術を覚えて仕事ができるまで育ちません。現役で精力的に仕事ができる人と、後進を育成するベテラン、そしてぼくらのように技術を受け継いでいく若手。それぞれが揃っているタイミングは、今しかないと思っています。なんとか、次にバトンを渡せる世代に、山に来て欲しいです」。

山師の魅力をもっともっと伝えていきたいという2人。今日も渡川の自然を未来に伝え守るため、山に入る。

一度木を切った場所で、再び切り出せるのはおよそずっと先。山師の仕事はスケール感が違う